飲食店が貸主から立ち退きを求められたときの対処法を飲食に強い弁護士が解説

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貸主から立ち退きを命じられても、簡単に応じる必要はない

飲食店を経営していると、いきなり立ち退きを命じられるなんて、経験がある方も多いのではないでしょうか。

貸主から言われたから応じなければならないのかと思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
日本では、借主の地位が強く、貸主が一方的に、賃貸借契約を解除することはできないのです。
賃貸借契約の解除には、正当な理由が必要とされています。

正当な理由が認められるかどうかは、様々な要素を考慮する必要があるのですが、基本的には、
貸主と飲食店側の双方が、建物の使用を必要とする事情の比較をすることになります。

そして、貸主側の正当な理由を補完するものとして、立退料を支払うというのが条件になるのです。

つまり、貸主側の建物使用の必要が、借主側よりも、大きければ、立退料は少なくなります。
一方、飲食店側の方が、建物使用の必要が大きければ、立退料は多くなります。

飲食店側の建物使用の必要性の要素

飲食店側としては、現状その建物で店舗を経営していれば、その建物を必要としている必要性は大きいです。

飲食店は、飲食店を運営するに当たり、資本投下をしているので、その必要性は重大です。
また、飲食店においては、立地も非常に重要です。立地については、他の場所でも成り立つのかを考慮することになります。

貸主側の建物使用の事情

・貸主側が、居住する必要性
これは、どうしても、その建物で居住しなければならない場合があれば、「正当な理由」は大きいことになりますが、通常は、その建物でなければならない事情はあまりないと思うので、「正当な理由」としては、弱いといえるので、立退料は高くなる要因になります。

・貸主が、営業する必要性
貸主が、その建物を自分の事業に使用したいという場合です。
この場合も、どうしてもその建物でないといけないわけではないので、「正当な理由」としては、弱いといえるので、立退料は高くなる要因になります。

・建物を売却する必要性

相続があって、相続税の支払いのために建物を売らなければならないという事情がある場合などです。
しかし、この場合も、貸主の一方的事情であること、貸している状態でも売却できることから、「正当な理由」としては、弱いといえるので、立退料は高くなる要因になります。

以上のほかにも、友人や親戚だから安くしていた、一定期間だけ特別価格で貸していたという場合には、貸主側の「正当な理由」になります。

また、建物の利用状況として、飲食店側が、他に多数の店舗を持っていて、当該店舗については、あまり使用していないなどの事情があるか。

さらに、建物が古く耐震性に問題があり、すぐにでも立て直しの必要性があるなどの場合には、貸主側の「正当な理由」がある場合に、当たります。

立退料は、どこまで請求できるのか

それでは、飲食店側の立退料は、どこまで請求できるのでしょうか。
請求できる金額の項目としては、

引っ越し費用などの経費、借家権価格、営業利益の補償などが請求できます。

引っ越し費用などの経費

これは、引っ越し費用や新しい店舗で新たな内装工事をするための費用、得意先などに店舗の移転を知らせるための移転通知の費用など、立ち退きをするために実際にかかる費用のことです。

借家権価格

借家権価格とは、飲食店が入っている建物の価値が増加している場合に、飲食店側が貢献した分の価格になります。

この借家権の計算は、実際には、土地家屋調査士の鑑定などで、明らかにします。

営業利益の保障

営業利益とは、現在経営している店舗からの立退きにより営業ができなくなったことによる損失分のカバーです。

これは、
・立退期間中に営業をしていれば得られるはずだった利益(逸失利益)
・従業員の給与補償
・新しい店舗が軌道に乗るまでの期間の補償
などが含まれます
もっとも、事案ごとに、どの項目の保障が、どの補償がどの程度認められるかは異なります。

立ち退き料がどのくらいもらえるかは、専門家の判断が必要

以上のように、立退料が実際どのくらいもらえるかは、まさにケースバイケースです。
飲食店としては、できる多くの立退料をもらえるように、専門家に相談し、金額を算定し、交渉しましょう。

 


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