従業員に残業代の請求をされた場合の対処法を飲食専門弁護士が解説

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飲食店の未払残業代請求が増えている

最近、飲食店の従業員が、会社側に、残業代などの未払賃金請求をする例が増えています。
弁護士業界でも、過払い金請求事件が下火になってきたので、次は、未払残業代請求を業務として行うというのがトレンドになっています。

では、飲食店側として、未払残業がされた場合には、どのような対応が必要になるのでしょうか?

未払残業代請求の一歩は、内容証明などの書面

残業代請求事件の多くは、従業員(大抵は、退職した従業員)から、未払残業代請求の書面が届くことから始まります。
弁護士から「内容証明」といった形で送られてくることが多いです。 ここで、注意するべきなのは、内容証明が送られてきても、慌てないこと。

通常、内容証明には、「◯日以内に返答しなさい」ということが記載されていますが、これは相手が勝手に決めたもの。
何の法的効力はありませんので、相手の要求に従う必要はありません。

ただ、あまり長い間、放置してしまうと、

①相手が労働基準監督署への申告
②相手からの訴訟提起

がされてしまう可能性があります。

①ですが、労働基準監督署とは、企業が労働基準法を守っているか、監視する機関です。
企業への立入検査などの強い権限があり、企業に対し、指導や検察官への送検など、強い権限を有しています。

②の訴訟提起ですが、労働事件の場合には、労働審判という制度があります。

これは、通常の裁判と異なり、3回以内の期日で決着しなければならないという制度です。 この制度では、訴えられた会社は、従業員が裁判所に訴えてから、40日以内に全ての主張と証拠を提出することが求められるのです。会社としては、非常にタイトなスケジュールで対応しなければなりません。

未払残業裁判で怖い付加金制度

さらに、裁判で怖いのが「付加金」という制度です。 これは、会社に労働基準法違反があり、未払賃金があった場合に、裁判所の判断で、最大で未払賃金の金額と同額の金銭の支払いが命じられるものです。

例えば、未払賃金が100万円あれば、付加金で100万円、合わせて200万円の支払いが命じられる可能性があるのです。

未払残業代請求から飲食店を守る4つのポイント

従業員から未払残業代請求をされた場合には、従業員からの請求を鵜呑みにしてはいけません。 それは、弁護士からの請求でも同じです。
従業員側からの請求は、実際よりも、「盛って」、つまり過大に請求されることが多いです。

飲食店側としては、書面を受け取ったら、以下のことを頭に入れておきましょう!

①残業代は、2年で時効
②基礎賃金が正しくない
③割増率が正しくない
④時間数が正しくない

消滅時効の完成は注意してください。 未払残業代などの労働債権の時効は、2年です。 つまり、2年より前の未払残業代については、法律上支払う必要はありません。

労働者側の弁護士から送られてくる書面には、勤務していた全期間の未払残業代の請求が記載されている場合がありますが、時効にかかっている部分は、支払う必要がないので、注意が必要です。

また、②から④については、法律上の判断が必要になりますので、専門家に正しい残業代を計算してもらうようにしましょう!

以上見てきたように、従業員から未払残業代が請求されても、慌てないこと。 そして、速やかに専門家に相談して、的確に反論する ということが肝要なのです!


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