私生活上の非行を原因として、従業員を懲戒処分できるのか

>

飲食店の法律問題

私生活上の非行を理由とする懲戒処分の可否

本来、懲戒処分は社内の秩序維持を目的とするものなので、社外での私生活上の行為を理由として懲戒処分をすることはできないはずです。

しかし、私生活上の行為であっても、それが会社の社会的評価を害したり、社内モラルに影響を与えるような場合、会社としてはそれを放置することはできません。

そのため、多くの就業規則では「刑事訴追され有罪判決を受けたとき」を懲戒事由としています。

中には「刑事事件の被疑者として逮捕されたとき」を懲戒事由とする例もありますが、誤認逮捕の可能性も捨てきれないことから、逮捕だけで懲戒処分を課すことには疑問が残ります。

痴漢などで捕まった場合

痴漢には、①都道府県の迷惑防止条例違反(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)と、②法の強制猥褻罪(6月以上10年以下の懲役)があります。

②の行為は、13歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いわいせつな行為をする場合ですが、被害者が13歳未満の場合は暴行脅迫を用いなくても強制わいせつに当たります。

それ以外の行為で、公共の場所または公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、または人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」は①の迷惑防止条例違反となります。

なお、迷惑防止条例違反の事案で本人が罪状を認め罰金で終了する場合は、略式起訴という簡易な手続きになります。

期間中は弁護士以外の者が被疑者と会うことはできませんが、逮捕から勾留に移行した場合は、会社担当者も議察署や拘置所で労働者と接見することが可能となります。

では、労働者が痴漢行為をした場合、会社としては、どのような処分をすべきでしょうか。

過去の判例では、電鉄会社職員が迷惑防止条例違反を理由に複数回、罰金刑を課せられていた事案での懲戒解雇が有効とされています(東京高判平成15年12月11日労判867・5小田急電鉄事件)。

これは電鉄会社:職員としての社会的地位に加え、複数回の罰金刑を受けており常習性が高いこと、以前にも同種事案で降格処分を受けていたことなどの事情が期動されたものです。

ですから、行為が悪質であったり(強捕わいせつに当たるような例)、その者が会社の管理職で部下に対する指導に当たるべき地位にあった場合、過去に同種事件を起こしていた場合などは、競旨退職や懲戒解雇もやむを得ないといえます。

しかし、それが初犯事案であったり、本人が深く反省し被害者との示談が成立したような場合は、出勤停止や降格程度にとどめるべきでしょう。


問い合わせ