飲食店におけるクーポンの法律的規制を弁護士が解説

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飲食店の法律問題

飲食店クーポンとはどんな性質をもつのか

飲食店が集客するために行う宣伝・広告の方法として、クーポンを配布するという手段がよく使われています。

たとえば、「ドリンク1 杯無料券」や「3000円以上のお会計で500円引き」など、お得な条件を表示した券を配布することで、飲食店は来店客数の増加を期待することができます。

ただし、クーポンは、注意して作成しないと、消費者との間にトラブルを引き起こす原因になってしまう場合があります。

たとえば、飲食店としては、ディナータイムに利用してもらうつもりで「会計金額から10%引き」というクーポンを作成したが、消費者はランチタイムでも利用できると誤認して来店・食事をし、会計時になってクーポンが利用できないことが判明して、争いが起こるということも予想されます。

このように、クーポンを作成する際には、使用期間、使用時間帯、その他クーポンが使用できる条件をできるだけ明確に表示して、消費者を誤認させることがないように配慮しなければなりません。

また、クーポンは、景品表示法の規制の対象にもなりますので、一定のルールに従って作成・配布する必要があります。

景品表示法上の規制

クーポンが景品表示法の規制の対象となる場合とは、その内容が、全員に対して提供する(総付景品)の提供に該当する場合です。

たとえば「来店者全員にコーヒー1杯無料」などという内容のクーポンの場合は、これに該当します。

また、「○日に来店した先着30名様」というように、提供を受けられる人数を限定している場合であっても、総付景品の提供に該当します。

総付景品の提供については、公正取引委員会の制限告示によって、提供できる景品類の最高額が定められています。

具体的には、取引の価額が1,000円未満の場合は200円まで、1,000円以上の場合は取引の価額の10分の2の金額までのものでなければ、総付景品とすることができません。

ただし以下に該当する場合は、景品表示法の制限の対象にはなりません。

  1. 商品の販売もしくは使用のため又は役務の提供のため必要な物品又はサービス
  2. 見本その他宣伝用の物品又はサービス(試食など)
  3. 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票(○%引きなど)
  4. 開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービス(オープン記念)

規制されるケースと規制されないケース

具体的にはどのような条件のクーポン券が景品表示法上の規制を受け、どのような条件であれば規制を受けないのでしょうか。

たとえば、来店客に「次回来店時にビール1杯無料」というクーポンを配布する場合は、規制の対象になります。

そのため、ビール1杯が400円である場合は、2,000円以上の支払いをした人に配布することは可能ですが、支払額が2,000円未満の人に配布することはできません。

一方、「ビールを3回注文すると、ビール1杯無料」というクーポンの場合は、同一の商品を付加して提供することになりますので、割引をしていると捉えられることになります。そこで、上記の③に該当することになり、景品表示法の規制の対象にはなりません。


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