飲食店従業員との身元保証契約とその法律的注意点

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飲食店の法律問題

飲食店における身元保証とは

身元保証とは、労働者の故意または過失によって会社(使用者)が損害を受けた場合に、第三者がその賠償を約束することであり、その約束した第三者を身元保証人といいます。

多くの会社では、正社員を雇用する際に、その近親者に「身元保証誓約書」を差し入れてもらったり「身元保証契約書」の締結を求めたりしています。

ただし、身元保証人が不当に重い貴任を負うことのないように、「身元保証ニ関スル法律」(以下「身元保証法」)が定められています。

身元保証法の内容とは

まず、期間の定めのない身元保証契約の存続期間は原則として3年であり、期間を定める場合でも5年を超えることはできません。身元保証契約を更新することはできますが、更新期間は年5を超えることはできません。

また、使用者は、労働者に業務上不適任や不誠実な事柄があって身元保証人の責任が発生しそうなときや、労働者の任務や任地を変更したために身元保証人の責任が重くなったり、労働者の監督が困難になったりするときは、遅滞なく身元保証人に通知しなければならず、これがないと身元保証人は将来に向かって身元保証契約を解除することができます。

さらに、保証人が責任を負う賠償額の範囲も制限されます。

裁判所は、労働者の監督に関しての使用者側の過失の有無、身元保証人が保証をするに至った事由や払った注意の程度、労働者の任務や身上の変化など、一切の事情を考慮した上で、身元保証人の損害賠償の責任やその額について判断することになるからです。

また、2020年4月1日以降の身元保証契約については、賠償金額の上限金額を規定しないと契約自体が無効とされていますので、注意が必要です。

身元保証の注意点

このように、身元保証人の責任はかなり制限されています。使用者としては以下の諸点を注意する必要があります。

まず、身元保証人の意思と資力を正確に確認する必要があります。特に、労働者を正社員として雇用する際の身元保証では、身元保証契約書は保証人自身に署名してもらうとともに、印鑑証明書を取るようにしておいてください

また、5年以上の身元保証契約はできないので、更新を怠らないようにしてください。さらに、労働者の環境や責任が変わった場合、身元保証人への通知を忘れないでください。

上記のようではあるものの、飲食店のアルバイト雇用の場合にまで、身元保証契約を取り付けるケースは多くありません。

むしろ、問題を起こさないための従業員教育を徹底するとともに、店舗賠償保険等に加入して被害者への補償を誠実に行うことのほうが重要でしょう。


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