飲食店を経営している方は、たくさんのアルバイトやパートタイムの方がいると思います。そんな中、近年、パートタイム労働法が改正されたのですが、パートタイマーを採用する際の説明としてどのような点に注意すべきなのでしょうか?
パートタイム労働者(パートタイマー)とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される正社員(通常の労働者)と比べて短い労働者をいいます。現在、全労働者中に占めるパートタイム労働者の割合は30%を超え、特に飲食関係においては90%近くに上ります。
このようなパートタイム労働者の増加の背景には企業による人件費抑制があり、その結果、パートタイム労働者と正社員の間での賃金・待遇道の格差が問題となりました。
そこで、平成5年に「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」)が制定されました。
しかし、パートタイム労働法の制定後も、パートタイム労働者の割合は上昇し続けました。特に、景気低迷とともに「正社員になりたくてもなれない」という「非正規労働者」が増加しました。
非正規労働者については、雇用の不安定さ、低収入、正社員との格差、能力向上が図れない等さまざまな問題が浮き彫りになったことから、その対策として随時パートタイム労働法が改正されています。ここではこの改正に焦点を当てて、外食・小売業における今後のパートタイム労働者の法律問題について説明したいと思います。
今回のパートタイム労働法改正のポイントをまとめると次のようになります(厚生労働省「パートタイム労働法のあらまし」)。改正の特色としては、パートタイム労働者の公正な待遇の確保と並んで、パートタイム労働者の納得性の向上が挙げられます。
パートタイム労働者の待遇と通常の労働者の待遇を招達させる場合は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはなりません。
有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組みが通常の労働者と同じ場合には、通常の労働者との差別的取扱いが禁止されます。
「通勤手当」という名称であっても、距離や実際にかかっている経費に関係なく一律の金箱を支払っている場合のような、職務の内容に密接に関連して支払われているものは、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して決定するよう努める必要があります。
厚生労働大臣の勧告に従わない事業主の公表制度の新設
雇用管理の改善措置の規定に違反している事業主が、厚生労働大臣の勧告に従わない場合は、厚生労働大臣は事業主名を公表することができます。
虚偽の報告などをした事業主に対する過料の新設
パートタイム労働法の規定に基づく報告を拒否し、または虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料に処せられます。
改正パートタイム労働法では、パートタイマーの納得性の向上が重要な課題となっています。そこで上記事項について、以下の事項について文書等(パートタイマーが希望すればFAXやメールでも可)で明示することが定められました。これらの事項については雇い入れたときに説明しなければならないので、有期雇用契約の場合は契約更新時にも改めて説明しなければなりません。
パートタイマーの中には、自己の待遇についての疑問を持つ人もいます。そうした人の疑問にこたえるために、今回の改正では、パートタイム労働者の雇用管理の改善等についての相談窓口を設置することが義務付けられました。パートタイム労働者を雇い入れるときは、それについて文書で明示することが必要です。
パートタイマーの中には正社員との待遇格差に不満を抱く人も少なくありません。そのため、事業主は、パートタイマーを雇い入れたときは、正社員との待遇差に関わる以下の事項について速やかに説明しなければなりません。
さらに、事業主は、雇い入れ後において雇用するパートタイマーから求めがあったときは、下記の事項について、そのパートタイマーに対して説明する必要があります。
パートタイマーがこれらの事項について説明を求めたことを理由に不利益な取り扱いをすることは禁じられます(改正パートタイム労働指針)。