スタッフ・従業員が交通費を不正!飲食店の対処法を、飲食店専門弁護士が解説

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飲食店スタッフ・従業員が交通費の不正受給発覚

スタッフ・従業員の交通費について、多くの飲食店では、従業員からの届出制を採用していて、従業員から申請された区間を全額支給、住所地の変更による通勤ルートの変更については、従業員からの申請のまま支払っているのが、現状かと思います。

しかし、転居などで当初申告した通勤区間より短くなったことを報告をせず、交通費は当初のまま受給している場合や、電車通勤といっておきながら、実は自転車通勤していたというスタッフもいたりします。

私どもでも、このような相談を多く受けます。

一人ひとりの金額は小さくても、塵も積もればで、人数も多く、期間も長くなれば、多額の金額になる可能性があります。

では、交通費の不正受給が発覚した場合、会社としてはどの様に対処したら良いのでしょうか?

刑事上の問題

故意に申告をしなかった場合には、刑法上の詐欺罪に該当しうる可能性があります。詐欺罪は、最長で10年の懲役刑が科されることもある重大な罪です。
実際に、刑事告訴するかどうかは別ですが、あまりに多額の金額を不正していた場合には、警察も事件として扱ってくれる場合もあります。

民事上の問題

交通費の差額は、当然、不正に受け取っているので、その差額分は返還を請求できます。
スタッフ・従業員が支払わないといった場合には、刑事告訴も視野に入れて、強い態度で交渉する必要があります。

他の従業員も、会社側の態度を見ていますので、犯罪行為でもある当該行為は、厳正に正しくいくべきでしょう。

 

飲食店の不正受給 会社として解雇できる?

不正受給が発覚するケースとしては、転居後の報告漏れが発端である場合、健康のために実は自転車通勤をしていたが、会社に報告しなかったというケースです。

交通費の不正受給が不正であると認識していないことも多いのが実情です。。

では、会社側としてはどのように処罰をしたら良いのでしょうか?

過去には、4年8か月に渡り不正受給をしていた場合でも、懲戒解雇は処分として重過ぎるという判例もあり、いきなり解雇処分とするのは難しいのが実情です。

もちろん、期間や金額にもよりますが、けん責や訓戒、重い処分であっても減給や降格にとどめておくのが安全です。
もちろん

飲食店としては、自主退社(合意退職)を促すことは考えられます。

ただし、処分は基本的には就業規則に則り行うものになりますで、交通費の不正受給における処分について、就業規則に規定されていることが必要となります。

そのため、飲食店として、転居した際は、社内手続きをどうするのか、
そして、飲食店としてどのような処罰を施すかを規定し、全スタッフに周知徹底する必要があります。

企業としての対応手順は

実際に不正受給が発覚した場合の対処手順としては、以下のような対応が考えられます。

①事実確認

飲食店として、従業員の話を一切聞かずに処分を下すのは、事実誤認があった場合に問題となる可能性もあります。そのため、従業員から意見を聴く場を設けましょう。

②証拠を集める

①にて聴取した内容が事実であれば、調書を作成しましょう。その際、当事者には必ず署名捺印をさせること!

他にも、不正を裏付けるものがあれば、保全しておきましょう。

③飲食店側として調査をする

当事者の言い分に誤りがないか、不正受給の期間はどのくらいか、金額は総額いくらになるのかなど、当事者の言い分だけを信用せず、飲食店側としても調査をしましょう。

証拠隠滅の恐れがある場合や、他の社員への混乱を避けるために、によっては出勤停止させるなどの措置も必要かもしれません。

④どのような処分をするかを検討

面談や調書をもとに、処分を検討します。事情や金額、反省の弁などを総合的に考慮して決めることになるでしょう。処分が決定した際には、書面で通知しましょう。

もし、減給処分とする際には、減額の限度額が労働基準法で定められているため、減額のし過ぎには注意しましょう。

また、不当利得分の返還をさせるか否か、させる場合には返還方法なども検討する必要があります。指定口座への振り込みによる返還とする場合が多いです。

飲食店側として、厳正な処分をする!

1円でも1万円でも、不正受給は立派な横領であり、ちりも積もれば大きな損害です。

飲食店側としては、兎にも角にも就業規則をしっかりと整備しておき、他の従業員にも、交通費の不正受給には、「厳格な処分がある」ということを知ってもらい、規定の通勤区間・方法以外の通勤をさせない決まりを確立させましょう。

金銭的問題以外にも弊害が!

会社として社員の正しい住所を把握していないと、緊急事態に対処ができなくなる可能性もあり、場合によっては労基署から管理体制を問われる可能性もあります。

また、実は自転車で通勤していたなどといった場合には、通勤途中に交通事故等にあった場合、労災として処理する必要があるかもしれません。

 


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