飲食店で賃料の他に支払うもの(権利金・保証金)の法律的なポイント

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飲食店の法律問題

飲食店を運営するにあたり、支払うべきお金

飲食店の経営には、賃料の他にもさまざまな名目の金銭が支払われることが多いです。

敷金は貸主に預ける保険のようなもの

敷金は、借主が店舗として実際に使用する際に、先払いで貸主に預けておく金銭です。

敷金を貸主に預けるのは、支払いの滞っている賃料や建物に関する損害賠償債務の担保が必要だからです。

担保されるのは、賃貸借契約終了時点までの債務に限らず、明渡完了までの債務も含まれます。

たとえば、滞納や汚損等がない場合、原則として敷金は契約が終了したときに全額を返還する必要がありますが、滞納などがあればそれを控除した残金を返還すればよいということになります。

また、店舗として用いられている部屋の傷や汚れを修理するための費用として利用されることもあります。つまり、敷金は貸主の立場からすると、一種の保険のようなものとして捉えることができます。

敷金は滞納した賃料、その他、あらゆる借主の債務の補てんに利用されますが、敷金を賃料の補てんとするかどうかは貸主が決めることであり、借主が決められることではありません。

そのため借主は、経済状況が苦しい場合でも、一方的に敷金を賃料に充ててもらうように要求することはできません。

店舗の権利金について

店舗を対象とした賃貸借契約を交わす際によく聞かれるのが権利金という言葉です。主に営業目的の賃貸借、あるいは土地の賃貸する場合に権利金が授受されることが多いようです。

差し入れた権利金については、返還される場合とされない場合とがあるため、契約を行う際には注意が必要です。権利金の額を算出する基準はあまり明確ではなく、貸主と借主の話し合いで決定されることが多いです。

権利金については、金額もかなり大きい場合や賃貸期間に応じて返還される場合もあるので、全く返還されない礼金のような金銭とは性質が基本的に異なっています。

権利金はその定義が今ひとつあいまいなため、時には返還するかしないかで訴訟に発展することもあります。特に「契約金」などと銘打って大金を貸主に支払った場合、これを権利金とみなすか否かが返還の有無に大きく左右してきます。

権利金といってもどのような種類のものであるのか、返還するのかしないのか、返還する場合には、具体的にはどの程度の金額をいつ返済するのかといった事項を明確に書面にしておくことが大切です。

退去時に返還されない礼金

賃貸借契約を行う際に、さまざまな名目で金銭が支払われるケースが多く見られることは前述の通りですが、このうち契約が終わった時点で、返還されないものの典型例として、礼金が挙げられます。

礼金の内容については、賃貸借契約を締結する当事者間の協議などにより決定されることになりますが、一般に、前述の権利金を、礼金と同一の意味で用いる場合があります。

礼金の大きな特徴は、借主の退去時に返還しないことにあり、礼金という名称が示す通り、賃貸したことのお礼として借主が貸主に払うものです。

保証金の償却などについての規定例

(規定例その1)

第○条(保証金の償却)

保証金については、年に5分の割合で償却する。契約更新時には、借主は償却された保証金に相当する金額を、新たに保証金として貸主に支払う。

(規定例その2)

第○条(保証金の償却)

保証金については、解約時に1か月分の賃料に相当する金額を償却する。

※規定例その1では、契約更新の際に借主は新たに保証金を支払う必要がある。

規定例その2では契約更新時に新たに保証金を提供する必要はなく、賃貸借契約の解約時にのみ保証金が償却される。

借家権の譲渡などで必要になる承諾料

承諾料とは、ある条件を飲んでもらう代わりに支払うお金です。

たとえば、飲食店などでは、事業の運営にあたり、店舗の内装について、借主が多額の費用をかけて工事等を行っている場合があります。

そして、仮店舗から退去する際に、自分が負担した工事費用等を回収するために、借主が持っている借家権を、第三者に居抜きで売渡したいと考えることがあります。

これは、借家権の譲渡にあたるため、原則として、賃貸人の承諾を受けなければなりません。その際に、賃貸人が承諾を与える対価として要求する金銭が、承諾料にあたります。

承諾料は、契約において貸主が禁止していたことを、金銭の支払いを条件として、認めてもらおうという広い概念のものですが、どのような場面で発生するかによって、ある程度、種類を分けて考えることができます。

承諾を要する場面としては、前述の借家権の譲渡の他、店舗の使用方法の変更などがあります。

契約更新の際に必要になる更新料

建物の賃貸借契約書をよく見てみると、多くの場合「契約期間は2年間とする」などの条項が記載されています。

このような契約条項のある賃貸物件において、長期間飲食店の経営をしようと思うと、2年ごとに契約更新をする必要があるわけですが、その手続をする際に更新料という名目の費用を請求されることがあります。

更新料に関することを規定した法律は特になく、どのような目的で支払われるかということは明確になっていませんが、地方によっては慣習化されているものです。

なお、多くの借主は貸主から更新料を請求されると、あまり疑問を持つこともなく「契約更新をするために必要な費用」として支払っているかもしれませんが、極端に高額な更新料が設定されている場合は、無効の主張や減額の交渉はあり得ることでしょう。


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