飲食店の賃料をめぐる問題を弁護士が解説

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飲食店の法律問題

飲食店の賃料をめぐる問題

飲食店にとって大きいのが、賃料です。今はコロナの影響で、賃料が重くのしかかっています。

この賃料をめぐる問題において、賃料を滞納した場合や、受領拒否された場合の対応方法を知っておく必要があります。

賃料を支払わなければならない

賃貸借契約を締結すると、賃借人(借主)から賃貸人(貸主)に対して、目的物の使用対価として支払われる金銭が賃料です。

飲食店においても、店舗の賃貸借契約を結んで事業を運営する場合には、賃料の支払いが必要になります。

また、店舗の場合には、家賃や地代だけでなく、賃主が所有している設備などを使用する場合には、それらの備品費用が賃料に含まれていることもあります。

一般的に、飲食店の売上高に占める賃料の割合は、1割程度であるといわれています。

賃料を払えないときの対策

賃貸借契約において、借主は賃料の支払義務を負います。したがって、飲食店の店舗を借りている場合にも、当然に賃料支払義務を怠ることは、借主としての義務を果たしていないと評価されます。

しかし、飲食店の経営状況その他の事情により、賃料の支払いが困難になることもあり得ます。

そこで、たとえば、貸主に対して、当月は賃料の支払いが困難であることを理由に、来月まで支払いを待ってもらうように交渉することは可能なのでしょうか。

賃貸借契約は、あくまでも当事者間の契約ですので、交渉の結果、貸主が1か月分の賃料の支払いを待つことに同意した場合には、1か月の間、賃料の支払いを猶予してもらうことが可能でしょう。

もっとも、貸主には、賃料支払いを猶予しなければならない法的な義務はありませんので、貸主が承諾しない場合には、賃料の支払いを待ってもらうことは困難です。

もっとも、賃料の支払いが滞っているため、借主は契約上の義務違反を行っているわけですが、1か月程度の賃料の滞納で契約自体が解除されることは、一般的にはありません。

また、賃貸借契約を締結する場合、契約に関連する賃借人側の債務を担保する目的で、一定の金銭授受がなされることが多いようです。

飲食店等の事業用の物件の場合には、保証金という名目が用いられる場合が一般的です。

保証金は、原則として借りている物件の返還が完了するときまでの債務を担保する目的で授受されます。そのため、賃借人が賃料を滞納している場合であっても、当然に保証金が、賃料として充当されることはありません。

ただし、支払いの猶予と同様に、任意に貸主が同意すれば、保証金から充当することも可能です。

賃料を払えないとどうなるのか

賃貸借契約は、貸主と借主との間に、信頼関係があることを前提として行われる契約です。そのため賃貸借契約の解除(契約を解消すること)は、貸主と借主との間で信頼関係が破られた場合に認められることになります。

つまり、借主が、いったん契約上の義務に違反したとしても、貸主側としては、簡単に賃貸借契約の解除を請求することはできないということです。

確かに、借主が賃料を支払わないというのは、借主としての基本的な義務を怠っていると評価することができます。

仮に、賃料の滞納が数か月におよぶ場合には、賃貸借契約の解除が認められやすいといえます

一般的には、ある程度借主の賃料不払いが継続されている状態になって、はじめて賃料の滞納による賃貸借契約の解除が認められるとされています。

ここでの「継続して不払いとなっている期間」とは、 契約の種類にもよりますが、毎月賃料を支払う契約であれば、少なくとも2~3か月以上は必要です。

ただし滞納が1か月分だけでもそれが繰り返されているときは、信頼関係破壊として契約解除が認められます。

事情によっては賃料の減額請求が認められる

たとえば、土地や建物に対する租税(固定資産税、都市計画税など)や管理費などが減額されたり、土地や建物の評価額が下がった場合、または、その他経済状況の変動、近隣の同程度の賃貸物件の賃料との比較などにより、現行の賃料が適正な額ではないため、借主側から貸主に対して、賃料の減額を請求する場合があります。

賃貸借契約では、賃料の減額について(増額の場合も同様です)、当事者間での協議で整うことを認めていますので、基本的には協議により解決することがよいでしょう。

協議が整わない間は、賃貸人は減額の裁判が確定するまでの間は、相当と認める賃料を請求することができます。


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