飲食店における労働時間の申告について弁護士が解説

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飲食店の法律問題

労働時間の自己申告制

飲食店で多いのは、シフト表と自己申告制を併用して労働時間を把握している場合です。しかし、シフト表はあくまで出勤予定表にすぎず、使用者が自ら確認した記録ではありません。

ですから、使用者または店長が実際の労働時間を直接確認するか、シフト表どおり の出勤であったかを労働者に確認した出勤簿を整備しなければなりません

自己申告制の場合には、労働者の自由意思が確保されている必要があります。例えば、店長が「必ずシフト表どおりに勤務してください!シフト表を超えて働いても給料は出ませんよ!」と厳しく指示するなどは、店長の指示が労働時間の適正な申告を阻害する要因となっており、自己申告制の要件を満たしません。

もし、パートタイマーから超過時間分の賃金 の請求があったならば、会社としてはその分の賃金を支払わなければなりません。

タイムカード制度の廃止はOK?

タイムカード方式の場合、実際の始業時間よりも早く打刻したり、勤務が終了しているのに打刻しなかったりして、記録された労働時間が実際の労働時間よりも長くなることが少なくありません。

そうした不都合を避けるためにタイムカードを廃止する会社も見受けられます。

しかし、タイムカードを廃止した会社に対しては、次のような裁判例があります。

会社が労働基準監督署から未払い残業代についての是正勧告を受けた後、タイムカードを廃止して出勤簿に押印させるだけの方式に切り替えたケースで、裁判所は、会社が労働時間の適正な把握を怠っていたとして未払い賃金と付加金(労働基準法が認めた会社に対する制裁金)の支払いを命じました(岡山地判平成19年3月27日労判 941・23セントラルパーク事件)。

このように、一旦、タイムカードが導入されて、それによって労働時間を把握するシステムができたのであれば、それを廃止することは大きなリスクを伴います。

むしろ、次のように努めるべきでしょう。

  • タイムカード制度を維持しつつ、実際の始業・終業時刻に合わせてタイムカードを打刻するように労働者を指導する
  • タイムカードと実労働時間との差異があった場合の修正を正確に実施する

タイムカードの打刻忘れをした労働者に対する欠勤扱いはOK?

労働時間の管理のためにはタイムカードの正確な管理が不可欠です。では打刻忘れを欠勤として扱うことはできるでしょうか。

使用者は労働者の労働時間を把握すべき義務を負っており、タイムカードは労働 時間を把握するための手段にすぎません。

したがって、実際に労働しているにもかかわらず、打刻を忘れたからといって欠勤扱いにすることはできません

打刻がなかった場合でも、他の資料に基づいて実際に労働した時間が把握できるのであれば、その時間の賃金を支払う必要があります。

なお、コンビニエンスストアの店長の未払い賃金が問題となった事案で、シフト表がしばしば変更され、店長が勤務時間中に所在不明になったり、勤務に戻らず帰宅することが多かったとして、タイムカードに始業時刻や終業時刻のいずれかしか記載されていない日について欠勤扱いにするほかないとした判例もあります(東京地判平成21年10月21日労判 1000・65ボス事件)。

タイムカードの不正打刻に対する懲戒処分はできる?

では、タイムカードを不正打刻した労働者に対する懲戒処分は可能でしょうか。 タイムカードの不正打刻が横行すると職場モラルが低下し、労働時間管理体制が 破壊されてしまいます。

したがって、不正打刻を懲戒処分の対象にすることも可能です。

実際にタイムカードの不正打刻を理由とした懲戒解雇が問題となった事案で、最高裁は「会社は不正打刻行為を防止するために『出社せずして記録を同僚に依頼する如き不正ありし場合は依頼した者共に解雇する。』との告示を掲示し、その旨を従業員全員に周知徹底させていたこと、労働者は当該警告を熟知していたにもかかわらず、あえてこれを無視し不正打刻に及んだこと… このような事実関係の下においては労働者の不正打刻がふとしたはずみで偶発的になされたと認定することは合理性に乏しい」として、解雇権の濫用とはいえないと判断しています(最判昭和42年 3月2日民集 21・2・231 八戸鋼業事件)。

ただし、上記の最高裁判決の事案はあくまで故意に不正打刻した事案です。

故意による不正打刻は給与の不正受領につながるため厳しい懲戒処分も可能ですが、 過失による打刻忘れに対して懲戒解雇等の厳しい懲戒処分を課すことは相当とはいえないでしょう

過失による打刻忘れの場合は、戒告、譴責、重くても減給(1日の賃 金の半分以内)にとどめるべきです。


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